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事業用借地権契約における主要留意事項

平成4年8月から現実に展開され始めた新借地借家法における事業用借地権もここ熊本においてもかなりの数の契約が為され,各所においてさまざまな事業用借地権を利用して造られた建物による営業が為されているようです。ここでは特に契約上の根拠となる法律条文に焦点を絞って,公正証書契約の原案となるべき合意契約書の作成上の留意事項を述べたいと思います。原案なるもののコピーもたくさんでまわっているようですが、契約書の各条文の法的根拠の正確な把握なしに為されている契約も多いと聞かされる中、きちんとした全体及び各条文の法的理解に基づいてトラブル等の発生しない契約書の締結を行っていただきたいと思い、重要と思われる条文を中心に取り上げてみました。

3条から第8条まで,13条及び第18条の規定は,専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有権を目的とし、かつ存続期間を10年以上20年以下として借地権を設定する場合には適用しない。

2.前項に規定する借地権の設定を目的とする契約は公正証書によってしなければならない。

借地借家法第3  借地権の存続期間

       〃 4  借地権の更新後の期間

       〃 5  借地契約の更新請求

       〃 6  借地契約の更新拒絶の要件

       〃 7  建物再築による借地権の期間の延長

       〃 8  借地契約の更新後の建物滅失による解約等

      〃 13  建物買取請求権

      〃 18  借地契約の更新後の建物の再築の許可

●取り壊し予定の建物の賃貸借  借地借家法第39条  

法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合ににおいて建物の賃貸借をするときは,第30条の規定に関わらず建物を取り壊すこととなるときに賃貸借が終了する旨を定めることが出来る。  借地借家法第30条 強行規定

.前項の特約は同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。

 

借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において,借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明渡すべきときは建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り,裁判所は建物の賃借人の請求により建物の賃貸人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

.前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは建物の賃貸借はその期限が到来することによって終了する。

判決又は相続による登記は登記権利者のみにてこれを申請することが出来る。

登記権利者が登記義務者の行方がわからないことにより,共同で登記の抹消を申請することが出来ないときは民事訴訟法の規定にしたがって公示催告の申し立てをすることが出来る。

.前項の場合において除権判決がなされたときは申請書にその謄本を添付して登記権利者だけで登記の抹消を申請することが出来る。

契約期間満了後又は解約による事業用借地権登記の抹消は登記権利者(貸主)と登記義務者借主)による共同申請によるが,借主の事業破産等による行方不明のときは共同申請による抹消登記が不可能なため,除権判決を得て貸主より単独にて抹消登記を行う。また建物の滅失登記も同様な方法にて行う。

賃借権の設定又は賃借物の転貸の登記の申請の場合においては申請書に借賃を記載し,もし登記原因に建物所有の目的、存続期間もしくは借賃の支払い時期の定めがあるとき、もしくは賃借権の移転、賃借物の転貸を許したとき、または借地借家法第22条、第38条第1項、もしくは第39条第1項の定めの有るときはこれを記載し,賃貸借をなすものが処分の能力もしくは権限を有しないものであるときは、その旨を記載することを要する。尚,登記原因に建物所有の目的の定めがある場合において,その建物が同法第24条第1項に規定する事業の用に供するものであるときはその旨をも記載することを要する。

 

借地借家法第22条    定期借地権

  〃   38条第1項 賃貸人の不在期間の建物の賃貸借

  〃   39条第1項 取り壊し予定の建物の賃貸借

  〃   24条第1項 事業用借地権 

不動産の一部についての賃借権の登記はすることができない 昭和30.5.21民事甲972号通達

数筆を合わせて借賃を定めた賃借権設定の登記申請は法第49条4号(方式不適合)により却下する

                            昭和54.4.3民三電信回答

よって、面積の広い土地の一部に賃借権を登記するためには分筆を行い,また建物所有を目的とする土地にのみ登記を行う。又,数筆に全部賃借権の設定登記を行うには合筆を行うか,各々に賃借権を設定登記する。

民法第602条に定めている期間を超えない賃貸借は抵当権の登記後に登記されたものでも之を以って抵当権者に対抗することが出来る。但し,その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは裁判所は抵当権者の請求によりその解除を命ずることが出来る。          民法第602条 短期賃貸借

よって、賃借予定地に既に抵当権等(根抵当権を含む)が設定されているときに事業用借地権を登記するときは、土地の貸主に設定済みの抵当権を抹消してもらったうえで事業用借地権の登記をおこなう。ただし、事業用の賃借権の登記にかかる登録免許税額が多額になるため、保全登記として建物の表示保存登記のみに留める場合は、あえて抵当権の設定登記の抹消まで要求されることはないかもしれないが、借地人側の銀行融資の絡みで現在の抵当権をいったん抹消した上で,借地人の建物表示登記終了後ふたたび抵当権設定を行うことになる可能性が高い

事業用借地権登記にかかる登録免許税 賃借権・地上権いづれにも   土地の固定資産評価額×2.5%

借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において,その第三者が賃借権を取得し,又は転借をしても借地権設定者に不利となる恐れがないにもかかわらず,借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは,裁判所は借地権者の申し立てにより,借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることが出来る。この場合において,当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは,賃借権の譲渡もしくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ,又はその許可を財産上の給付に係わらしめることが出来る。

契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは,その解除は相手方に対する意思表示によりてこれを為す。

.前項の意思表示は之を取り消すことを得ず。

当事者の一方がその債務を履行せざるときは,相手方は相当の期間を定めてその履行を催告し,もしその期間内に履行なきときは契約の解除を為すことを得。

当事者の一方がその解除権を行使したるときは、各当事者はその相手方を原状に復せしめる義務を負う。但し,第三者の権利を害することを得ず。

.前項の場合において返還すべき金銭にはその受領のときより利息を付することを要す  。

.解除権の行使は損害賠償の請求を妨げず。

売買契約に関する費用は当時者双方平分して之を負担す。

本節の規定は売買以外の有償契約に之を準用す。但し,その性質が之を許さざるときはこれにあらず。

債務者がその債務の本旨に従いたる履行を為さざるときは,債権者はその損害賠償の請求をすることを得。債務者の責に帰すべき事由によりて履行を為すことが出来ないとき又同じ。

損害賠償は別段の意思表示なきときは金銭を以ってその額を定める。

 

地代関連条文

土地およびその上にある建物が同一の所有者に属する場合において,その土地または建物のみを抵当と為したときは、抵当権設定者は競売の場合において地上権を設定したものとみなされる。但し,地代は当事者の請求により裁判所がこれを定める。

  1. 地代が土地に対する租税その他の公課の増減により,土地の価格の上昇もしくは低下,その他の経済事情の変動により,または近傍類似の土地の地代に比較して不相応となったときは、契約の条件に関わらず当事者は将来に向かって地代の額の増減を請求することが出来る。ただし、一定の期間地代を増額しない旨の特約がある場合にはその定めに従う。
  2. 地代の増額について当事者間に協議が調わないときは,その請求を受けた者は増額を正当とする裁判が確定するまでは相当の地代を支払うことで以ってよい。但し,その裁判が確定した場合には既に支払った額に不足があるときは,その不足額に年1割の割合による支払い期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 
  3. 地代の減額について当事者間に協議が調わないときは,その請求を受けた者は減額を正当とする裁判が確定するまでは相当と認める額の地代の支払いを請求することが出来る。但し,その裁判が確定した場合において既に支払いを受けた額が正当とされた地代の額を超えるときは,その超過額に年1割の割合による受領のときからの利息を付して之を返還しなければならない。
  1. 借地権設定者は弁済期の到来した最後の2年分の地代について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。
  2. 前項の先取特権は地上権または土地の賃貸借の登記をすることによってその効力を保存する。
  3. 第1項の先取特権は他の権利に対して優先する効力を有する。但し,共益費用,不動産保存及び不動産工事の先取特権ならびに地上権または土地の賃貸借の登記より前に登記された質権及び抵当権には後れる
  4. 前3項の規定は転借地権者がその土地において所有する建物について準用する。

不動産賃貸の先取特権はその不動産の借賃その他,賃貸借関係より生じた賃借人の債務について賃借人の動産の上に存在する。

●同前 目的物の範囲  民法第313条

土地の賃貸人の先取特権は賃借地またはその利用のためにする建物に備付けたる動産,その土地の利用に供したる動産及び賃借人の占有にあるその土地の果実に存在する。

賃借権の譲渡または転貸の場合においては、賃貸人の先取特権は譲受人または転借人の動産に及ぶ。譲渡人または転貸人が受けるべき金額についてもまた同様とする。

賃借人の財産の総清算の場合においては賃貸人の先取特権は前期,当期および次期の借賃、その他の債務および、前期ならびに当期において生じたる損害の賠償についてのみ存在する。

同前 敷金有る場合  民法第316条  

賃貸人が敷金を受け取っている場合は,その敷金を以って弁済を受けざる債権の部分についてだけ先取特権を有する。

  1. 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人はその滅失した部分の割合に応じて借賃の減額を請求することが出来る。
  2. 前項の場合において残存する部分だけでは賃借人が賃貸借をなしたる目的を達することが明らかに出来ないときは賃借人は契約の解除を為すことが出来る。
  1. 賃借人は賃貸人の承諾がないときはその権利を譲渡し,または賃借物を転貸することは出来ない。
  2. 賃借人が前項の規定に反して第三者をして賃借物の使用をさせたり,または収益を上げさせたりした場合は賃貸人は契約の解除を為すことが出来る。
  1. 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては借賃の前払いを持って賃貸人に対抗することは出来ない。
  2. 前項の規定は賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げるものではない。

借賃は動産,建物及び宅地については毎月末にその他の土地については毎年末にこれを支払うことを要する。ただし、収穫季節のあるものについてはその季節後遅滞なくこれを払うことを要する。

借地権は,その登記がなくても土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することが出来る。

.前項の場合において,建物の滅失があっても借地権者がその建物を特定するために必要な事項,その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは,借地権はなお同項の効力を有する。但し,建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては,その前に建物を新たに築造し,かつその建物につき登記した場合に限る。

賃貸借期間関連条文