相続放棄・限定承認・単純承認

仮例 若い頃からギャンブル好きで馴らしたAさん、ギャンブルの三冠といわれる競輪,競馬,パチンコとなんにでも手を出しそこそこ儲けては最後は大損をしたものです。中高年になってからはいろいろな事業にも手を出し途中まではなんとか成功するのですが最後はいつもかなりの赤字を出し,年々Aさんの財産は先細りしていく一方だったのです。やりたい事をやり,いいたい事を言い豪放磊落に生きてきたそのAさんもよる年波には勝てず,つい先だって長年患っていた病を悪化させ急死致しました。

 残された遺族である奥さんと息子のBさん達は生前Aさんにいろんな意味で泣かされてきたものの,Aさんの残した幾つかの事業を引き継いでこれからはそれらの事業をきちんと立て直して儲けの出る事業にしていこうと心に誓っています。

 ところで肝心の相続のほうですが,Aさんが亡くなってからもう3ヶ月が過ぎようとしていますが,今のところなんの手も打っておりません。周りの人間は「すぐにでも相続放棄をしないととんでもないことになるよ」とは言いますが,亡きAさん名義の土地はたくさんあるし,概略計算ではAさんの残した借金よりも残した財産のほうが多そうだとたかをくくって何もしないでとうとう3ケ月が過ぎてしまいました。ところが計算外の債務が次から次へと出てくる始末にBさん達は頭を痛めてしまいました。それもそのはずです。債権者たちは「貴方達は相続放棄をしていないのだから相続した財産で支払えなかった分については自分たちの固有の財産で責任を以って支払ってくれ」と強く迫ってきたからです。 

 

 

相続放棄:条文の上をクリックすると根拠条文が見れます

相続が開始した後に相続人が相続の効果を拒否する意思表示。相続財産が債務超過である場合には相続人が意に反して過大な債務を負わされるので,これを回避するために認められた制度。

要件:相続放棄をするには,自己の為に相続の開始を知ったときから3カ月以内に家庭裁判所にその旨を申述しなければならない     民法第938条915条第1項

効果:相続放棄をした者は,初めから相続人とならなかった者とみなされ,共同相続の場合は,他の相続人の相続分が増加する。また,相続放棄をした者については代襲相続は認められない。                 民法第939条887条

撤回・取消 相続放棄を撤回することは許されないが、一定期間内に無能力や詐欺・強迫などを理由として取り消しをすることは出来る。その際,その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。     民法第919条

限定承認

相続人が相続によって得た財産を責任の限度として被相続人の債務及び遺贈の義務を負担することを留保した上で,相続の承認をすること。相続財産が明らかに債務超過の場合は,相続放棄をすれば足りるが,負債超過の恐れがあるという程度の場合には,限定承認をすれば清算の結果、プラスの財産が残ればこれを取得できるため有利である。

方法:

限定承認をするには,自己のため相続の開始を知ったときから3カ月以内に、財産目録を作成して家庭裁判所に申述書を提出してしなければならない。相続人が数人あるときは必ず,全員でしなければならず一人でも欠けた限定承認は無効である。

                     民法第922条923条924条

単純承認。

相続人がなんの留保もつけずに相続の承認をすること。限定承認に対する。

この結果、相続人は被相続人の債務についても無限責任を負うことになる。単純承認は必ずしも積極的な意思表示を必要とせず、自己のために相続の開始を知った後,限定承認又は相続放棄をしないで3カ月が経過した場合や,相続財産を勝手に売却するなどの処分行為をするとか,これを隠匿してひそかに消費したり、悪意で財産目録に載せないなどの行為があった場合も、単純承認をしたものとみなされる。        民法第920条921条915条?919条

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