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デジタル時代に現れた「不動産ブローカー」とは?

インターネッがさほど普及していなかった1020年前には考えられもしなかった「不動産一括査定」の各社広告が今ではヤフーのトップページをはじめ、

あちらこちらのページで頻繁に出てくる時代になっています。

イーターネットのはしりの時代においてはインターネットでの広告はテレビはおろか、新聞、雑誌、ラジオ等の広告媒体の下の下をさまよっていたものです。

直近の広告の電通の調査によれば2018年のマスメデイァを介した広告媒体調査によれば、インターネットによる広告は第一位のテレビに迫る勢いだと云わ

れています。

第一位のテレビが1兆8000億円程であるのに対して、インターネットでの広告はそれに迫る勢いで僅か数百億円の差でに迫っていることが報じられていました。

2019年はテレビを抜いて1位の座に躍り出ることはもう時間の問題だとさえ云われています。

このようなインターネットの勢いが爆発的に大きくなっていくにつれて、不動産の売買取引も大きく変化していきます。土地や建物等の売買物件の買主を捜す方法と

して、これまでは殆ど新聞や不動産専門の雑誌の広告欄を通じて行われてきました。

しかし新聞の小さな1枠程度のスペースでは不動産の内容を詳しく網羅することはできないだけでなく、新聞自体をインターネット世代の若者が情報獲得のツールと

して選ぶことから離れていくにつれて、情報獲得の手段としてパソコンやスマホに取って代わられる時代がやってきたのです。それは地元の新聞を見れば以前は一面

全部を占めていた不動産の広告が今では僅か数行になってしまったことからもわかります。

では自己所有の不動産を売却したいと思っている人たちがアナログな時代にどういう手段を取っていたかと云えば、それは先にも述べましたように地域の不動産業者

や銀行さん等を訪ねて行って「どうしたものか」という相談から始まっていたものです。

それは匿名性のない目に見える形で、マンツーマンで相談がやり取りされ、物件の調査から査定までがすべてが具体的な形で行われていました。具体性、透明性、正確

性、信憑性に裏付けられたやり方であったと思います。

ところがインターネットで査定を希望する人たちが増えてきてからはこれらのことが一変しました。スローガン的に云えば、匿名性、抽象性、不透明性、曖昧模糊、不確

実性、適当性等の言葉がピッタリするような「不動産一括査定屋さん」が登場してきたからです。

インターネットで簡単に所有不動産の査定依頼ができることは素晴らしいことだと思います。肩肘張って登記権利証書や登記簿謄本、建築確認通知書等を用意して「私の

不動産の価格は幾らぐらいするのでしょうか?」と真剣に真摯にやり取りしていた時代が決して良い時代だと云っているわけではありませんが、現在の「不動産一括査定

屋さん」がインターネットを介してやり取りしている査定のやり方には大きな違和感を感じている方も多くおられるのではないかと思います。

私が感じている大きな違和感とは端的に云って、「不動産一括査定屋さん」が提示しているサイトを見ていると、そこには不動産を所有している方たちの不動産を正しく、

正確に査定をするというよりも、いかにして自社のサイトに引っ張り込んで査定依頼を行わせるかに腐心している感が拭えないからです。それは端的に云えば

@「査定依頼物件内容の大雑把性、不透明性、適当性」

A「高く売却できることをことさら強調しすぎ」

B「訪問査定よりも机上査定」

C「建物査定の際の建物構造欄の欠如」

D「建物築年月の欄の大雑把性」

等々です。

不動産査定のやり方も近いうちにインターネットでの広告がテレビを抜くことは時間の問題と云われています。多くの人が「不動産一括査定屋さん」を通じて自分の

不動産を正しく査定してもらいたいという考えになっていると思えます。人間には欲があります。

ですから自分の不動産を高く評価してもらいたいのは当たり前のことでしょう。低い評価をされるのは自分の容姿や出自をけなされるのと同じような思いにもなるこ

とでしょう。

人間誰しも自分を高く評価してくれる人に靡くというか従っていく性質を持った生き物だと思います。

不動産の売買も男女の付き合いにも似た部分があります。不動産の仲介業をやっている不動産業者は男女の仲を取り持つ仲人のようなものです。お互いの悪い部分は

極力伏せて、良い所を引っ張り出して仲をまとめる。そういう風に考えると「貴方の不動産を高く評価して高く売ってあげます!」よという誘い文句で言い寄られた

不動産所有者は少なからず心が大きく動くのではないでしょうか。

加えて「不動産一括査定屋さん」同士の厳しい競争もあります。10年程前はインターネット上で「不動産一括査定屋さん」を見かけるのはまだ珍しいような状況でした。

しかしここ数年は「不動産一括査定屋さん」は儲かる商売と知った方達が挙って参加してきていて、恰も「雨後の竹の子」のような観を呈しています。

その為、「不動産一括査定屋さん」のどのサイトを見ても、一番目に付くのは自社のサイトで査定の申し込みをすれば自分の不動産が高く売れるという思い込みをさせる

うな広告が目立っている感じがしてなりません。「不動産一括査定屋さん」は不動産所有者の不動産を「買上げ」てくれるものでは決してなく、自社のサイトに登録してい

る不動産業者に「査定を行わせる」だけのことしかできないのです。

査定依頼者に不動産業者を紹介するのが仕事内容になっているのですから、「不動産一括査定屋さん」は斡旋屋、周旋屋、馬喰(ばくろう)、ブローカーと云った昔ながらの

言葉が当て嵌まるのが「不動産一括査定屋さん」と云えます。

このような状況で行われる「不動産一括査定屋さん」への査定依頼に対しては、実際の査定を行う不動産業者も査定が有った都度高い料金を「不動産一括査定屋さん」に支払

い続けている以上、1件でも多く査定を行って売却の媒介契約を取らなければならないという悪循環に嵌ってしまうわけです。

正しい査定額を出そうと心がけても競合する不動産業者が出してくるであろう査定価格を予想するとき、そこには悪しき競争原理が働いてしまってどの業者も必要以上に高い査定

になってしまう傾向が強くあると云えましょう。

弊社も、数社の「不動産一括査定屋さん」を介して査定作業を頻繁に行っていますが、このような状況を考えると年間に100件ほどの査定を行っても、そのうち媒介契約(一般媒介)

に至るのは34件、そして成約に至るのは1件もしくはゼロというかなり悲観的な予測をしています。それほど現在の一括査定の動きを見るとき費用対効果の薄いものと云わざるを

得ません。

まさしく「不動産一括査定屋さん」とはデジタル時代に現れた「不動産ブローカー(紹介屋さん)」と云っては言い過ぎでしょうか?自分自身は何の査定技術、テクニックも持ち合わせ

ておらず、不動産を売りたい人、売るかもしれない人を不動産業者に紹介して、成約の可否に関わらず紹介料を受け取るやり方は画期的なビジネスモデルの一つであり、賢いやり方である

かもしれませんが、やはり今のデジタル時代に現れたブローカー(紹介屋さん)そのものであると云えます。

続きは●不動産が高値で売れるという幻想