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代理人は復代理人を選任することができます。通説では、復代理人は代理人の代理人ではなく本人の代理人だと言われています。今日取り上げた最高裁の判例によると、復代理人が物の引渡義務を負う場合、代理人に引き渡せば、本人に対する引渡義務も消滅すると言っています。しかも、復々代理人が選任された場合も、復代理人に引き渡せば、特別の事情がない限り、同様だと言っています。代理人の復任権、復代理人の地位について考えさせられる判例です。

第104条〔任意代理人の復任権〕

委任ニ因ル代理人ハ本人ノ許諾ヲ得タルトキ又ハ已ムコトヲ得サル事由アルトキニ非サレハ復代理人ヲ選任スルコトヲ得ス

第105条〔復代理人選任の責任〕

代理人カ前条ノ場合ニ於テ復代理人ヲ選任シタルトキハ選任及ヒ監督ニ付キ本人ニ対シテ其責ニ任ス

 代理人カ本人ノ指名ニ従ヒテ復代理人ヲ選任シタルトキハ其不適任又ハ不誠実ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知シ又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス

第107条〔復代理人の権限〕

復代理人ハ其権限内ノ行為ニ付キ本人ヲ代表ス

 復代理人ハ本人及ヒ第三者ニ対シテ代理人ト同一ノ権利義務ヲ有ス

昭和51年4月9日 最高裁第二小法廷 判決 

本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結されたことにより、民法107条2項の規定に基づいて本人復代理人間に直接の権利義務が生じた場合であつても、右の規定は、復代理人の代理行為も代理人の代理行為と同一の効果を生じるところから、契約関係のない本人復代理人間にも直接の権利義務の関係を生じさせることが便宜であるとの趣旨に出たものであるにすぎず、この規定のゆえに、本人又は復代理人がそれぞれ代理人と締結した委任契約に基づいて有している権利義務に消長をきたすべき理由はないから、復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭等を受領したときは、復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負い、もし復代理人において代理人にこれを引渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務は消滅し、それとともに、本人に対する受領物引渡義務もまた消滅するものと解するのが相当である。

そして、以上の理は、復代理人がさらに適法に復代理人を選任した場合についても妥当するものというべきである。

原審の適法に確定した前記事実関係によると、復々代理人である上告人は右受領金を復代理人である訴外Nに交付したというのであり、本件において前叙特別の事情についてはなんら主張、立証がないから、被上告人はもはや上告人に対して右受領金の引渡を求めることはできない。

 

弁護士中山知行